「六曜(むよう)」俳句会とは

六曜(むよう)俳句会は
旧「花曜」(鈴木六林男師主宰)の同人・会員が中心となって、
2005年4月に大阪で発足しました。

代表・出口善子、同人会長・玉石宗夫、創刊編集長・望月雅久。
二代・大城戸ハルミを経て現編集長・芝野和子。

句会で楽しく研鑽を積みながら、季刊「六曜」を発行しています。
主に現代仮名遣いを用い、新しい感覚と広い視野でのモチーフを扱っていきます。
メンバーは20代から80代までと幅広く、初心者も伸び伸び参加しています。


自然詠から無季俳句まで個性のある多様な俳句に挑戦中。

六曜57号(2019.12.10)から

57号「自選集」共鳴句    出口 善子選

名月や胸高く巻くバスタオル   綿原 芳美
恐竜の微睡む午後の夏校舎    岩男  進
スコールのまず向日葵に落ちかかり 大城戸ハルミ
贅沢と思う一人の零余子飯    岡本  匡
水母の傘太古の海を開閉す    神田ししとう
音もなく戦争と秋忍び寄る    喜多より子
長月の嵯峨野の池に雲と鯉    絹笠 紀子
抱き上げて蝉の声まで重たかり  佐藤富美子
絵本閉じ月と兎を眠らせる    芝野 和子
イルカジャンプ台風一過の大空へ  玉石 宗夫

 

57号「六曜集」共鳴句     出口 善子選 

輪の中へ次の花火の潜り込み    芝野 和子
目撃者多数案山子等黙秘中     柴生  函
大根の種まき余生ふくらます    田中 晴子
まず麦茶沸かして一日始まりぬ   谷  千重
美術展裸婦と目が合い立ち尽す   玉石 宗夫
楯として開く大振り黒日傘     永井美智子
人ばかり見て夕焼けとぶつかりぬ  羽賀 一惠
古書市に秋の夕日をめくる音    花輪 朋子
彼岸花飛鳥の村をキャンバスに   安井 博子
梅雨の鼬愛らしさ撒き溝へ消ゆ   山内  一
蝙蝠のもつるる闇を抜け来たる    山本 紀子
風渡る順に辞儀する枯れすすき   鷲尾規佐子
化石竜太古の夕日立ち上げる    岩男 進
ダンボールに詰まってたのは花野風 有田 美香
戸隠の神の気配の霧襖  梅村眞佐子
箱眼鏡揺らぐ世界を押さへ込み   神田ししとう
台風が明日と川岸えぐりけり     喜多より子
衣紋棹に軽き衣懸け夏惜しむ    絹笠 紀子
残り香や後部座席にうすき闇    桑代サダ子
狂わねば立つてられねえ酷暑かな  阪上 真吾
睡蓮の昼のほとりに時止まる    佐藤富美子 

出口善子句集『娑羅』より自選十句

出口善子第七句集『娑羅』 

  (2019年10月30日 角川文化振興財団刊)

自選十句

寒紅を拭い自由を取り戻す
密やかな浅利の私語が闇濡らす
着膨れてなかなか取り出せない言葉
水団に凌ぎしいのち水中り
木犀の気配に開く自動ドア
反骨の音立て踏まれ春落葉
封じ目を瞬時に暴き牡蠣割女
御器齧バベルの塔を縦横に
豪雪の人を殺めしあとも白
娑羅の花墜ちて盛者の香を放つ

 

  

六曜56号(2019.9.10)から

●56号「自選集」共鳴句    出口 善子選
花菜漬ける唯物論を重石にし    綿原 芳美
野末にて居眠る地蔵夏始まる    岩男  進
青葦原次々風を脱いでゆく     大城戸ハルミ
初浴衣姿見に訊く右左        岡本  匡
鰻焼く匂い関所を抜けてくる    神田ししとう
虎杖やポキンと折れる自尊心    喜多より子
蓮咲く嵯峨野の池に古寺映し    絹笠 紀子
大関の一気に夏をすくい投げ    佐藤富美子
レギュラーを目指す素振りや風光る 芝野 和子
胸中は複雑骨折髪洗う        玉石 宗夫
●56号「六曜集」共鳴句    出口 善子選
夕暮れの蚊帳吊草に風の入る     佐藤富美子
隣地から忍びの者の筍来       芝野 和子
兜蝦の棲まぬ標高田植えして     柴生  函
メタセコイア青葉を空に突き上げて  田中 晴子
夏に入る新たなホース長くして    谷  千重
思い切り空振り新人の夏来たる    玉石 宗夫
ネクタイてふ責具を外しビアガーデン 永井美智子
マネキンの両手剥がされ衣更     成山 幸子
白玉のつるり三時にすべりこみ    羽賀 一惠
ジャスミンの香のついてくる我が歩幅 花輪 朋子
提灯に裂け目見つかる盆用意     安井 博子
散り際も俎板叩くたたく桜鯛     山内  一
仰臥する楽しみ誘ふ苜蓿       山本 紀子
鯉幟令和の風を腹いっぱい      鷲尾規佐子
取り口に石ひとつ置き水盗む     岩男  進
夜濯ぎにくすんだ一日(ひとひ)放りこむ 有田 美香
脱ぎすてし衣に霧吹く祖母の夏    梅村眞佐子
働く顔麦わら帽の陰を出ず      神田ししとう
筆圧のだんだん薄く目借時      喜多より子
蝉時雨家をつつんで降り止まず    絹笠 紀子
城垣を撫でて叩いて花を見ず     桑代サダ子
残業を終えたスーツに春の月     阪上 真吾

六曜55号(2019.6.10)から

 

■「自選集」共鳴句  出口 善子選

卒業式模型骸骨肩落とし       玉石 宗夫
花冷えの縮んでいたる象の鼻    綿原 芳美
目ン玉に潮逆巻く桜鯛         岩男  進
多喜二忌の缶コーヒーに暖をとる  大城戸ハルミ
一斉に福音を吐くチュウリップ    岡本  匡
分かたれて音を違へる春の水    神田ししとう
薄氷や核燃料の覚めるなよ     喜多より子
小春日や肩の重さを抜く力      佐藤富美子
QRコード翳せば開く春の門     芝野 和子

■「六曜集」共鳴句  出口 善子選

うららかにとばされてゆくポリ袋      阪上 真吾
棄てられぬ母の半生冬コート       佐藤富美子
職歴の欄をはみだし啄木忌       芝野 和子
空函(あきばこ)をひたすら潰す梅二月 柴生  函
落椿昨日の鬱にかぶさり来        田中 晴子
喪終えし頬にぽつぽつ春の雨      谷  千重
春来たるスクリュー湖をかき回し     玉石 宗夫
フェルメールの光たづさへ寒日和    永井美智子
ウインドーに金管楽器春日射す     成山 幸子
忽ちに王女となりぬげんげの輪     羽賀 一惠
屋根裏の過去へ戻すや雛納め     花輪 朋子
雫雨枝垂れ桜の色宿し          安井 博子
昭和遠し炬燵・縁側・サザエさん     山内  一
菜の花にひからびてゆく指五本     山田  遊
芽柳や参道に買ふ木の小匙       山本 紀子
春うらら猫にあくびをうつされて     鷲尾規佐子
五限目の声遠ざかる目借り時      岩男  進
夕暮れにはくれんが待つ点灯夫     有田 美香
逞しき岩の割れ目の野すみれや     梅村眞佐子
霾るや百円で売る「罪と罰」        神田ししとう
駅伝の補欠選手の懐手         喜多より子
倒木に入るを拒まれ梅林        絹笠 紀子
老木のまどろむ隙を鳥帰る       桑代サダ子

六曜54号(2019.3.15)より


■「自選集」共鳴句   出口善子選

シュレッダーの休む暇なく開戦日    芝野 和子
コンクリートの堤防で果つ恵方道    玉石 宗夫
杉蓋の痩せた手触り年用意       綿原 芳美
縁側の暖を吸い取り冬の蠅       岩男  進
知らぬ間に骨より女造られし       岡本  匡
秋天を舐めてキリンの舌伸びる     神田ししとう
秋桜わたしの世界ゆれている      喜多より子
秋天の竿に広げて柔軟剤        佐藤富美子

 

■「六曜集」共鳴句   出口善子選

十二月八日の余話にさじ加減      桑代サダ子
短日をなにに使っていたのやら     阪上 真吾
開戦日食べ放題の皿重ね        佐藤富美子
重箱の手垢を拭う四日かな        芝野 和子
最果てのそのまた先へ虎落笛      柴生  函
言い残し聞き残し夫冬空へ        田中 晴子
除夜の鐘部屋暗くして正座して      谷  千重
過労死の国の勤労感謝の日       玉石 宗夫
稲雀母国を出づることのなく       永井美智子
陸軍基地荒廃すすむ冬菫        成山 幸子
初夢を破って停まる救急車        羽賀 一惠
丸餅に慣れて故郷遠くなり        花輪 朋子
助手席の白菜ごろりと向きを変へ    安井 博子
名月や嵐に地震つぎは何         山内  一
釣り上げし太刀魚ギラリ牙剥けり     山本 紀子
晴れと褻の間(あはひ)を裂くる鎌鼬   横山 崩月
菊人形裾の方より散り始め        鷲尾規佐子
稲光事件現場を袈裟に切る        岩男  進
乗り換えの駅で真冬が待っていた    有田 美香
橙の落ちる落として夕暮れる       梅村眞佐子
ルミナリエ人の流れの暗きかな      神田ししとう
大衆の証し毛糸の帽子かな        喜多より子
湯豆腐の湯気の向こうに渡月橋     絹笠 紀子

 

六曜52号(2018.9.1)から

●六曜52号「自選集」共鳴句  出口善子 選 

梅雨空の郷へ続ける道と風      喜多より子
地球儀の国境薄れ雁帰る       佐藤富美子
筍ともらわれていく新聞紙       芝野 和子
だんじりが行く人間を従えて      玉石 宗夫
ヒマワリを十本植えて引き籠る    綿原 芳美
末成りのきゅうり梵字となりにけり  岩男  進
母の日の五右衛門風呂に濃き恥毛  岡本  匡
限り無く読点続く蝶の道         神田ししとう

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●52号「六曜集」共鳴句 出口善子 選

とりあえず胸を扇ぎし夏帽子       喜多より子
夏空を太陽の塔独り占め         絹笠 紀子
硝子越し津軽の歪む桜桃忌       桑代サダ子
ろくでなしばかり集めて花見かな    阪上 真吾
夕暮の母の貌なる花大根        佐藤富美子
永き日のマンドリンの音(ね)持ち帰る 芝野 和子
浮上して時空を吸ひし金魚かな     柴生  函
蛍の火消えつ灯りつかくれたる     田中 晴子
目覚めては生死確かむ蛍かな     谷  千重
暴れ川鎮め青草伸びてゆく       玉石 宗夫
もう君の詩なき雑誌ほたるの夜     永井美智子
梅雨入るや十六骨の傘通る       成山 幸子
青芝の禿げたるほどの死闘果つ    羽賀 一惠
かご盛りの枇杷や離島の風まとい   花輪 朋子
地下街に潜り迷いし半夏生        安井 博子
鵜が潜り成果はこれよと淀を吐く    山内  一
蝉時雨女の肌の乾くこと         山田  遊
蜘蛛の囲や昨日払ひたる場所に    山本 紀子
虫干やパンドラの匣封印す       横山 崩月
友人を並べピントは赤い薔薇      鷲尾規佐子
貧しくて家族仲良し枇杷実る      有田 美香
昆布干すヒグマの親子通る浜     梅村眞佐子
荒梅雨へ罵詈雑言を放り込み     岡本  匡
産土の性(さが)紫陽花の色に出づ  神田ししとう

 「仄赤し」    出口 善子

 

 仄赤し     出口 善子

 

 

 

胸郭に潮ひたひた春立つ乎

 

蹠の硬し踏絵の国の裔

 

終活の憂いを添えて針供養

 

男臭聚めて山の焼けはじむ

 

躓いて掌紋採らる焼野原

 

歩めるは罪か吠えられ冴え返る

 

早熟な猫が声もて闇さぐる

 

赤き肉叩き炙れり虐殺忌

 

仄紅しほうれん草とわが余命

 

空耳へ靴音帰り来る余寒

 

溺れたる文字の大河菜の花忌

 

明朝に瞼の軋む二月尽

   /角川「俳句」 2016年2月号掲載

 

  「素顔」  出口善子

 素顔        出口 善子

脱稿の吐息にとどき初明り 
用済みの両腕を垂れ寝正月
乳房萎え初湯の嵩を増やさざる
初鏡古びし顔に見詰められ
隠れ居の素顔で通す三が日
羊日の長蛇の列の殿に
産土の神に授かる武器・破魔矢
セーラーの胸の前なる孕み箸
靴よりも北風が先んじ自動ドア
粥草やはこべら多き地下売場
初でんわ生前葬を告げ来たる
約束はふいオリオンに脚が無い

     /角川「俳句」2015年1月号掲載 

 

「晩節」 出口善子

 

  晩節            出口 善子

 秋冷を足し雑穀の水加減

 冬瓜を煮透かせ有態には言わず

 だしぬけに尖る保護色茄子の蔕

 擽られこぼれた本音ねこじゃらし

 志失せたる背(せな)の草虱

 男結びの弛ぶ松陰嚢(まつかさ)蹴るたびに

 指と舌あと何汚す黒葡萄

 晩節を守り障子貼る二、三枠

 死者のほか頒つ当てなし零余子飯

 通分のあと行き詰まる夜を学び

 引導のリズムとなりし鉦叩

 六林男の近づく枳殻棘だらけ

      角川「俳句」二〇一二年十一月号掲載

「 私 史 」 出口善子

 私 史         出口 善子

 ゆっくりと景を巻き上げ牡丹雪

 啓蟄の地下や人類蠢きて

 紙が切る晩学の指冴え返る

 大試験まず背骨を垂直に

 重からぬ私史の足跡下萌ゆる

 銃声の消えし野面を這う霞

 陽炎える大地の予後をなだらめて

 「俳句αあるふぁ」二〇一三年二・三月号掲載

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